「器をつくることを
一生懸命考えていたら
おいしい料理のお店も、
一緒に出来上がりました」

マルミツ陶器合資会社
代表者 加藤 健司氏(49才)

創業59年になる。マルミツ陶器は個人ユーザー向けに企画、商品化している器「STUDIO M'」とレストランやダイニング、ホテルなどで利用される業務用の器を企画、商品化した「SOBOKAI」の二つのラインを持つ。そして、その器を通して「よりよい食事とシアワセな時間」へ繋げていくおいしい料理のお店を展開している。多くの料理人と日々の生活で愛される器とはどのようにして生まれてくるのだろうか・・・マルミツの陶器と代表である加藤氏を訪ねる散歩にでかけてみたい。

はじまりはルノーキャトルの愛車と一緒に


Bistrot Gri-Grille'e(ビストロ グリグリエ)は同社が「食事」について考える場所として建てられたソボカイデポの中にある。建物の中には他に「ギャラリー」、「料理教室」などの空間がある。

Bistrot Gri-Grille'e(ビストロ グリグリエ)は同社が「食事」について考える場所として建てられたソボカイデポの中にある。建物の中には他に「ギャラリー」、「料理教室」などの空間がある。

シュクル ボール/名古屋にある同社の直営ショップ「クーヴェル・ア・ラ・メゾン」にて販売。スープやカフェオーレボールとしても使える。優しく語りかけてくれるような器

シュクル ボール/名古屋にある同社の直営ショップ「クーヴェル・ア・ラ・メゾン」にて販売。スープやカフェオーレボールとしても使える。優しく語りかけてくれるような器

名古屋から瀬戸線に乗り、ゆらゆらと終点まで行くとやきもので知られる瀬戸の町に辿りつく。緑と木漏れ日が優しい風と戯れ、川のせせらぎが静かにささやいている。9月上旬オープンのマルミツ陶器が直営するBistrot Gri-Grille'e(ビストログリグリエ)はクールな佇まいにもかかわらず、そんな優しい空気の中に自然と溶け込んでいた。そして、建物の横には可愛らしいルノーがアイコンのようにちょこんととめられている。加藤社長がマルミツ陶器を受け継ぐ時に、一人の相棒として購入した想い入れのある車だ。

このおだやかで歴史ある瀬戸の町で、加藤社長は食器の卸問屋を営む丸光陶器の長男として生まれ育った。子供の頃は特別、食器にも家業にも興味はなく、内気でなかなか一歩前に出ることができないタイプだったという。ただ、いつかは会社を継がなければいけないのだろうと、子供なりにうっすらと思っていた。

マルミツ陶器の食器はどれもでしゃばりすぎないデザインが、使う人と心地良い関係にしてくれる。それは純粋で内気な少年がルーツにあるような気がしてならない。

大学で瀬戸を離れる頃には内気な少年ははどこかへ消え去り、卒業後1年程、ベンチャー企業に務めるが自然の流れにはあらがえず、家業を継ぐために瀬戸の町へと加藤社長は帰ってきた。

「仕事は卸問屋ですから輸出食器メーカーさんから食器をトラックの荷台にひたすら積み降ろすという。手は痛くなるし、とにかく毎日が地味でつらくてしかたなかったですね」、と笑い飛ばしながらも冗談抜きで本当に辛かったんだからと加藤社長は何度も繰り返した。

マルミツ陶器では主に輸出用の食器を扱っていたので時折、おしゃれなカフェオーレボールや洋食器が目の前を流れていった。それを横目で見ながら加藤社長はほのかに憧れていた。モノを動かすだけでなく、自分が手がけた器を一般ユーザーの手に取ってもらえたらどんなに素敵だろうかと。そんなことを思いながらも、つらい毎日は規則正しくやって来た。

「でも耐えることに関してホント、強いんですよ」と笑う。そんな加藤社長に漂う空気はいつも軽やかなのが不思議だ。

逃げずに耐えてきたから舞い降りてきたのか・・・転機は突然やって来た。


自由は辛い試練も喜びも、一緒に連れて来た


「仕入れ先のメーカーが倒産したんです。その時、縛られていた糸がふっと、ほどけた感じを覚えました。次の瞬間には、よし自分で考えて作った器を売ろうと心に決めていました」

1988年、個人ユーザー向けの器をオリジナルで企画し商品化する「STUDIO M'」事業をスタートさせた。

特にプロダクトデザインの経験はなかったというが、加藤社長の心は、型にはまることなく自由なスケールで曲線定規を片手にデザインを次々と描いていった。今では全国1000店舗以上の店で取扱いがあり、業務用の食器を含め約3500種類の器を展開している同社。STUDIO M'は思いの他、好調だったが、その後オープンさせたクーヴェール・ア・ラ・メゾン(STUDIO M'の直営店)ではなかなか売れず4年位は売れない時代が続いたという。

「クーヴェール・ア・ラ・メゾンの売上が一日、5000円なんていう日もありました(笑)」

そんな時代を経て、どうしたら多くの人に愛される器になっていったんだろうか。

「食器について一つひとつ真摯に考えることです。考え抜いて、どんなに小さなことでも間違えに気づいたら一から何度でも作り直す。絶えず止まらないでいることで愛される器は作られていくんじゃないのかな。だめなことにちゃんと向き合っていけば、売れないことを恐れる必要はないんです。もちろん、売れたからって安心できるというものでもないんです。そして、食器は食事をするための道具だということ。どのように使えばより良いのかをさまざまな生活シーンの中に落とし込み、提案していける食器を作ることです」

使い手に敬意を払うデザインということなのか。

食器の素材感、大きさ、フォルム、機能性、収納性・・・全ては料理をする人と食べる人、そして空間の中でバランスよく調和した時に決定づけられていく。そう、『調和』の佇まい。それがマルミツ陶器のデザインなのだ。

「今までにない新しい料理を作りたくなる。そんな気持ちを掻き立てるような器をつくっていきたいですね」


器ができることをこれからも考えていきたい


レストランやダイニングなどで利用される業務用食器「SOBOKAI」のシリーズ

レストランやダイニングなどで利用される業務用食器「SOBOKAI」のシリーズ

Bistrot Gri-Grille'e(ビストロ グリグリエ)ではフレンチの中でも素材の美味しさをシンプルに引き出し、かつ大胆に食する「バスク料理」を楽しめる

Bistrot Gri-Grille'e(ビストロ グリグリエ)ではフレンチの中でも素材の美味しさをシンプルに引き出し、かつ大胆に食する「バスク料理」を楽しめる

もう一度、9月上旬オープンのBistrot Gri-Grille'e(ビストロ グリグリエ)の話に戻ろう。

「食事をよりよいものにする。そのために器ができることを考えていきたい」、マルミツ陶器の哲学とも言える。Bistrot Gri-Grille'e(ビストロ グリグリエ)はその実践の場所でもある。ちゃんとした素材を最高においしく、大切な人と楽しく食べるということは、人生においてかけがいのないひと時であり、ちゃんと生きることにつながっているに違いない。

Bistrot Gri-Grille'eは都心から少し離れた所にあるが、加藤社長は生まれ育ったこの瀬戸の町でお店をオープンさせることにこだわっていた。

「歴史あるこの町がいつまでも活気ある町であって欲しい。そして、この町で暮らす人たちもずっと元気でいて欲しいんです。だから、地元の人に他ではあまりないバスク料理をBistrot Gri-Grille'eで楽しんでもらいたいんです。家族のお誕生日会とかお客さんが来た時は、一緒にここへ来て欲しいですね」

ちゃんと食事をする。ちゃんと生きる。ちゃんとを確かめるために、Bistrot Gri-Grille'eへ、近々行ってみたいと思う。


加藤 健司氏(49才)
マルミツ陶器合資会社 代表者
PROFILE

加藤 健司氏(49才)
マルミツ陶器合資会社 代表者

昭和35年生まれ、愛知県出身。大学を卒業後、ベンチャー企業に勤務。1984年、マルミツ陶器の代表になる。器を中心にテーブルウェアのオリジナルブランドを立ち上げる。趣味のバイクではドガティ、トライアンフを愛し、料理を作ってみんなをもてなすこともある。7割は楽しい飲み会というロックバンドではギターを担当。


PROFILE
社名 マルミツ陶器合資会社
住所 〒489-0945
愛知県瀬戸市弁天町207番地
TEL 0561-82-1010
FAX 0561-82-6222
創業 1950年
資本金 3000万円
従業員数 46名
事業内容 テーブルウェアと関連商品の企画・制作と卸売・小売
PROFILE
■クーヴェール・ア・ラ・メゾン
〒465-0026
愛知県名古屋市名東区藤森2-285-1
■ペコリ
〒465-0026
愛知県名古屋市名東区藤森2-285-1
■ボビン
〒465-0026
愛知県名古屋市名東区藤森2-285-1
■ビストロ グリグリエ
〒489-0825
愛知県瀬戸市祖母懐町45

2009年9月掲載


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